HBOCってどんな病気?

HBOC:遺伝性乳がん・卵巣がん症候群

乳がんや卵巣がんの多くは、遺伝する病気ではありません。しかし、遺伝的な要因がはっきりしていて親から子に遺伝することのある「遺伝性のがん」があることも事実です。そのような遺伝性のがんは、乳がんや卵巣がん全体のうち約10%を占めると言われています。

乳がんや卵巣がんの患者さんが複数見られる家系を調べた研究によって、乳がんや卵巣がんの発症と関連している2種類の遺伝子が同定され、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子と名付けられました。この2種類の遺伝子は男女関係なく誰でももっている遺伝子ですが、生まれつきこの遺伝子のどちらかに乳がんや卵巣がんの発症に関与する変化(病的変異)があると、乳がんや卵巣がんなどになりやすいことが分かっています。

HBOCは、英語の疾患名Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndromeの略称で、日本語では「遺伝性乳がん・卵巣がん」と呼ばれることもあります。HBOCは、遺伝性のがんの中でも頻度が高く、また研究が進んでいる病気です。BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異が見つかった場合に、HBOCと診断されます。

HBOCのがん発症リスク

日本人女性が生涯のうちに乳がんを発症するリスクは9%、卵巣がんは1%と言われています。
世界中で行われた数多くの研究によって、生まれつきBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異をもっている場合どの程度がんになりやすいかが明らかになってきました。HBOCのがん発症リスクについてはたくさんのデータがあります。
例えばNCCNガイドラインでは、BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性の生涯発症リスク推測値について、乳がんは41-90%、卵巣がんは8-62%と記載されています(※)。

生まれつきBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性でも全員が乳がんや卵巣がんになるわけではありません。乳がんしか発症しない方もいれば、乳がんを発症した後に卵巣がんを発症する方もいます。一生涯どちらにもならない方もいます。

(※)リスクの数字に幅があるのは、参照されている論文が複数あるためです。それぞれの論文の研究では研究対象者や研究経過観察期間が異なるので、推測されるリスクにも違いが生じています。

HBOCの個別化医療

HBOCの女性では、乳がんや卵巣がんになりやすいだけではなく、「若くして乳がんになる」、「乳がんを多発する(対側乳がん・同側乳がん)」などが見られることがあります。HBOCの男性では、一般の男性よりも乳がんや前立腺がんになりやすいことが知られています。そのため、HBOCでは一般的ながんとは異なる医学的管理が推奨されています。

HBOCと診断された方にはHBOCに合った手段や間隔で継続的な検診が推奨されます。また、乳房温存療法が可能であってもあえて乳房切除が選択肢として提示される場合があります。さまざまな状況に配慮した上でリスク低減のための卵巣・卵管切除を選択肢として検討することもあります。
HBOCと診断された場合にどのような医療が行われるのか、どのような選択肢があるのかについては、遺伝カウンセリングなどで詳しい話を聞くことができます。また、提示された選択肢のどれを選ぶかは、十分な説明を受けてから自由な意思で決めることができます。

遺伝カウンセリングについては、こちらをご覧ください。

このページの情報は、次のガイドラインや統計資料を参考にして作成されました。ガイドラインや統計資料は随時改訂されますので、それに合わせて上記の情報も更新されることがあります。

・National Comprehensive Cancer Network Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN ガイドライン),[Genetic/Familial High-Risk Assessment : Breast and Ovarian]
Version2, 2017
・日本乳癌学会 編集「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン ②疫学・診断編 2015年版」、金原出版新社、2015年
・「最新がん統計」(2016年8月2日更新)、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター